令和5年度 こどもてつがく低学年 7月 レポート
折紙のナイフは危ない?危なくない?
今日はまず、ウォームアップで折紙でナイフを作ることからスタート。大はしゃぎする男子と、「こういうの好きよねえ」みたいに少し冷めた目で男子を見ている女子……笑
みんながそれぞれのナイフを作ったところで、問いを投げかけます。
「この折紙のナイフ、危ない?危なくない?」
「いや危なくないよ。紙だもん。」「でも目に入ったら危ないかも。」と、意見が分かれます。
「じゃあ、”いつも危ない”、”ときどき危ない”、”全然危なくない”だったらどれ?」と聞くと、”ときどき”に票が集まりました。
「紙で手をピッて切ったことある。痛いし、危ないこともあるよ」
「じゃあ同じ紙でできているこの本も危ないことがある?」
「うん、本だって危ないことある。指を切ったり、重い本だったら足に落ちてきたら痛い」
ここにあるもの全部危ない?
「じゃあ例えば今この部屋にある他のものはどう?」
「バインダーは頭にガンって当たったら危ない」「ホワイトボードも危ないかも」「座布団も口に詰まったら危ない」「空気だって吸い込み過ぎたら危ないらしいよ!」
ここである子がこんなことを言いました。
「え?そうするとここにあるものは全部危ないってことになっちゃうよ!」
それって何か変な感じがする。もうちょっと「危ない」について考えてみよう。いつ危ないのかな?危なくなる原因はなんだろう?
「先っぽがとがってると、危ない」
「人が原因なのかな」
「(ナイフでちょっかいを出し合う男子に向かって)あんたたちが一番危ないよ!」
じゃあ危ないのは人が原因?人が原因じゃなくても危ないときはある?
「ナイフが床に落ちてて、それをたまたま踏んじゃったら、人が原因じゃないけど危ない」
「でもそれは床に置いた人がいるから、やっぱり人が原因じゃないかな」
危なくないといけないものは?
もう少し「危ない」について考えてみよう。危ないことって悪いことかな?逆に危なくないといけないようなものってある?
「本物のナイフは危なくないと意味ない。だって切れないもん。」
「ミサイルとか。例えばどっかの国がミサイルを打ってきて、それを打ち落とそうとミサイル打ったけど、”お誕生日おめでとう!”みたいなのが出てくるやつだったらやられちゃう」
問いを出してみる
では、今日の対話を終えて、新しく生まれた問いを書いてみましょう。
子どもたちからは、以下のような問いが出てきました。
「ここにあるものは全部危ないの?」
「危ないものが来たら危ないもので返すのがいいの?」
「危ないものがなかったら何も始まらないから、危ないものが必要?」
こどもてつがくでは、答えを出すというよりも、むしろ問いを生み出すことに重きを置いています。『目的への抵抗』(國分功一郎著、2023)には、哲学を勉強する意味について、次のように書かれています。
- テンプレに留まることなく考えを進めていけるようになることこそ、哲学を勉強することの意味の一つだと僕は思っているんです。なぜならば、哲学というのは基本的に問いを立てて、その問いに概念を持って答える営みだからです。(p23)
子どもたちには、対話をきっかけに、まずは問いを立てることに慣れてくれたらと思っています。それが、思考する力を育む第一歩になるはずです。最後に出てきた問いには、驚くほど哲学的なテーマが含まれていました。次回は、もっと問いを出すことに焦点を当ててもいいかもしれません。
(文:だいちゃん)