こどもてつがく低学年6月レポート

絵本『みつけてん』を読んで対話する

6月は絵本『みつけてん』(作: ジョン・クラッセン 訳: 長谷川 義史)を使って対話をしました。https://www.crayonhouse.co.jp/shop/g/g9784861013300/

あらすじ

二匹のカメが一緒に帽子を見つけました。でも、帽子は一つだけしかありません。

「どや にあう?」「うん かっこええで。」

「なぁ ぼくはどう?」「ええんちゃう。」

二匹のカメは帽子を被りあいっこしてお互いに見せ合います。

二匹とも似合っているので困ったものです。どちらかが被ればどちらかが被れません。

そこで、一匹のカメが帽子は置きっぱなしにして見つけなかったことにしないかと提案します。最初から見つけなかったことにすれば問題が起きずに済むというわけです。

二匹のカメは帽子を置いたまま去っていきます。

夜も更け、そろそろ眠りに就くころです。二匹のカメはそろそろ寝ようかと言います。

お互いに寝たか確認しあいますが、どうやらどちらも眠りに就いていないようです。ようやく一匹のカメが眠りに就くともう一匹のカメは帽子のそばへ歩み寄ります。

二匹のカメと一個の帽子はどうなってしまうのでしょう。

ピクトブックより引用(https://pictbook.info/ehon-list/isbn-9784861013300/)

読み聞かせは関西弁ネイティブのあやちゃんにお願いしました。関西弁だからか、みんなも釣られて、「似合ってないやろ!」「なんでやねん!」など、関西弁でツッコミをしていました。

みんなはどうする?

ここから対話に入ります。まずは、「みんなが亀だったらどうする?」と聞きます。

「帽子1つしかないから、交代で使えばいいんじゃない?」

時間を区切って、例えば午前中は亀A、午後は亀Bのようにするという案です。

「でもそれだと、私がもし早起きだったら得しちゃうよ。そんでもう一人の亀さんが早寝だったら損しちゃう。」

時間を完璧に二分しないと、不公平感があるのでしょうか。ちょっと可愛くて笑いそうでしたが、「じゃあ時間だと、ぴったり同じにするのはなかなか難しそうだね。時間以外に何を基準にしたら公平になるんだろう?」と聞きます。

「どっちか欲しい方がもらえばいいんじゃない?」

「でもどっちも欲しいって言ってるよ」

「じゃあちゃんとした理由がある方。例えば、お肌が弱くて、帽子がないと日焼けで肌荒れしちゃうとか」

“ちゃんとした理由”という言葉が出てきました。確かに、「お肌が弱くて……」と言われたら「どうぞどうぞ」となりそうだね。でも「欲しい」っていうのは本当に”ちゃんとした理由”ではないと言える?

「ちゃんとした理由じゃないよ。意見と理由は違う。」

「欲しいっていうのはただの意見で、お肌がっていうのは理由。」

主観的なのか客観的なのか、という感じかな?客観的な理由を持っている方が、優先されるべき、と子どもたちは考えているようです。もう少し突っ込んでもよかったのですが、話題を変えます。

分けるってどういうこと?

「じゃあ今ここに、みんなで分けていいよと渡された100万円があります。君たち4人で分けるなら、どう分ける?」と聞いてみました。

「えーっと、100万円を4人で分けると、20あまり2だから……」

「違う違う(笑)割り算は難しいか。25万円ね。25万円ずつでOK?」

「うん、OK」

「じゃあみんなに、理由を聞いてみましょう」

すると、「ゲーセンで使いたいA君」「貯金をしたいB君」「お母さんにプレゼントを渡したいCさん」「寄付をしたいDさん」という風に分かれました。これでも25万円ずつ?

「うん、25万円でいいよ」

じゃあここに、2つ条件を追加します。

①「怖い人から借金をしているだいちゃん」が加わって、5人になったらどうだろう?ちなみに100万円を明日返さないと、だいちゃんは大変なことになります。

②「寄付をしたいDさん」はよくよく話を聞くと、手術を控えている友だちに、手術代の補助としてお金を渡したいということがわかりました。

すると、お母さんにプレゼントをしたいCさんは、、

「それだったら25万円はいらないよ。私の分あげる」

貯金をしたいBくんは、、

「たぶんだいちゃんはヤバそうだから、100万円を全部あげて、Dさんの友だちには僕とCさんがそれぞれ(個人資産の)30万円あげる」

個人資産も使って助けようとするBくん……。なんて優しい子……。

ちなみに、サラッと自分の分を取り上げられたA君は、、

「僕はゲーセンに行きたいのに……泣」

と言っていました。

「じゃあこれだったらどうだろう?だいちゃんが借金をしたのは、ゲーセンで使いまくったから。」

「うーん。それは自分のせいだけど、やっぱり命が危ないならとりあえずあげたほうが良いと思う。」

「じゃあ”ちゃんとした理由”っていうのは、命にかかわること?Dさんの友だちも命に関わるかもしれないけど。」

「うーん、だいちゃんは明日危ないから、とりあえずあげた方がいいかなって思った」

じゃあ”ちゃんとした理由”と”時間”は関係しているかな?どう関係しているんだろう、と聞こうと思いましたが、時間が来たのでここでストップ。

「公平とは何か?」というような対話になりました。先日、哲学(対話)を授業に取り入れている、お茶の水女子大学附属小学校の教員の方の発表を、代表が聞いてきました。その中では、「分けるとは何か?」ということについて考えた実践の紹介がありました。形が異なる13本のさつまいもを、お世話になっている4人の先生に分ける、という課題。算数では割り算を教え、そこでは形は無視して、全て1として計算できる良さがあります。しかし、現実には形が不揃いだったり、さつまいもが苦手な先生がいたり、色々なこととのバランスを取りながら「分ける」。どうやって合意を形成するのか、という話にも繋がります。自分ごとの算数になるためには、対話ができることが必要です。色々な問いについて、たくさんの対話を交わしていきたいと思います。

(文:だいちゃん)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA