令和5年度 こどもてつがく高学年 4-5月 レポート

こどもてつがく第二期生、高学年クラスの対話がスタートしました。

第一期生の低学年クラスに参加していた子どもたちで、高学年になった子もたくさん参加してくれ、合計14名です。

こどもてつがくの取り組みは日本でも徐々に広がっていますが、こんなにたくさんの子どもたちが年間通して哲学的に考えることは稀かもしれません。

4月、5月はワークシートを使って対話を行います。Mary Midgleyというイギリスの哲学者が作成されたものを使用しました。

まずは、哲学的な「問い」を考えてみるワーク。ワークシートでは、問いの例として「ものごとの良い/悪いは、何によって決まるのだろう?」「私たちはみんな同じように世界を見ているのか?」「どうして私たちは、何かを知ることができるのか?」が挙げられていました。そのような、インターネットで調べても簡単に答えが出てこないような問いを、考えてもらいます。

子どもたちからは

「人間はなぜ妖怪や神などを信じるの?」

「なぜ地球外生命体を見つけようとしているのか?」

「どうして人は自分と少し違う人を仲間外れにしたり、いじめたりするのか?」

「天国や地獄は本当にあるのだろうか?」

「なぜ人類は生まれたのだろう?」

「人間は同じ生きものなのにどうして戦争を起こしてしまうのだろうか?」

「お母さんに『いい子にしててね』って言われるけど『いい子』ってそもそも何かな?って思いました」

「人は平等なはずなのに、勝ち負けがあるのはなんでだろう?」

「なぜ名前があるのだろう?」

「どうして人には寿命があるのだろう?」

「何が嫌なことで何が嬉しいことか、わかるのはなぜか?」

などが出てきました。

「ファッションセンス」とか「ユーモアのセンス」など、それぞれの世界にセンスがありますが、哲学の世界では「問いを立てるセンス」が大事です。みんな、センスありますね!!!

次に、Midgley氏の「哲学的に考えることは配管のようなもの」という主張に従って作られたワークをしてみます。

水漏れや、配管の仕方が悪く、水浸しになっている風呂場の絵をみて、どんな問題があるかを考えるワーク。

印象的だったのは、「トイレの後ろのパイプが外れてる!」という意見に対して「これ本当にパイプかなあ。ほうきの柄じゃない?」と考える子がいたことです。「本当に?」と立ち止まることができるのは、哲学的に大事なことだと考えています。

次のワークは、「私たちはお互いなんて必要ないし、自分たちだけでやっていけるよ。」という人がいたら……?というものです。

その人が、「どんな言動をするかもしれない?」「どんな人を怒らせてしまうかもしれない?」「その人にどんな声掛けをする?」と考えてみます。

「わからないことがあったときに混乱するかもしれない」

「自分の考えだけで突っ走っちゃうかも」

「助けを借りられずに動けなくなっちゃうかもしれない」

では、試しに、だいちゃんが「他の人なんて必要ない」という人になりきってみます。

「一人で料理もできるし、一人でお金を稼いで生活もできる。最悪無人島でも行って、サバイバル生活するのももしかしたら大丈夫かもしれないよ」という感じで言ってみます。

 すると

 「料理をするにしても、食材を買うお金も欲しいし、そのためには他の人と関わらないといけないでしょ?今からでも遅くないから他の人の助けを借りなさい。」

「あなた会社に入っていますよね?その会社はあなただけではやっていけませんよ?」

「自分で料理できるって言ったけど、自分でやるだけだったら好きなものばっかり食べて栄養崩れちゃいますよ!」

「今だいちゃん以外の全員がいなくなったとしたらどうするの?原始人みたいにして生活できるって言うかもしれないけど、それで人生に意味があるんですか?自分のやりたいことができるんですか!?」

「だれもいなくなって、一人で哲学とかできますか?」

「みんながみんな、誰も必要としないからって好き勝手やる。泥棒とかもする。そんな世界に住みたいと思いますか?」

 すごい攻撃にあいました(笑)

「それで人生に意味はあるんですか?」「一人で哲学できますか?」「誰も必要としていない世界に住みたいと思いますか?」というのは、「確かに」と思いました。

 今回、皆さんには、反対の立場だけで考えてもらいましたが、これからは、色んな視点から考えてほしいと思っています。「こんなこともありえない?」「本当にそうかな?」と問いを立ててほしい。自分の考えを強化するのではなく、むしろ覆されることを楽しんでほしい。そう思っています。

これからたくさんの問いを、みんなで考えていきます。

小さな哲学者が、どのように能力を発揮してくれるのか、楽しみです。

文:だいちゃん

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